特集 クリスジェリコ損しない名試合5選

WWEからAEWまで、常に一線級で輝き続けるクリス・ジェリコ。多彩なキャラクター変化と確かなリング技術で、時代ごとに名勝負を量産してきました。本記事の「特集 クリスジェリコ損しない名試合5選」では、WrestleManiaからAEWのデスマッチまで、日本から正規ルートで視聴しやすく、今あらためて押さえておきたい試合だけを厳選。背景ストーリーや時代的な位置づけも整理しながら、海外プロレスファンが“ハズさない”ジェリコ入門・復習ガイドとして紹介します。

クリス・ジェリコとは?実績とスタイル解説

クリス・ジェリコは、WWE・AEW・新日本プロレスなどメジャー団体を渡り歩き、30年以上トップ戦線で活躍し続けるレジェンドレスラーです。カナダ出身で1990年デビュー、軽量級のクルーザーとして頭角を現し、その後WWEでは史上初のWWE&世界ヘビー級王座の統一王者となりました。AEWでは初代世界王者となり、新団体をメインストリームへ押し上げた功労者でもあります。

スタイル面では、ライオンサルトやウォール・オブ・ジェリコといったテクニカルな攻めに加え、年齢とともに打撃と関節技を織り交ぜた“引き算のプロレス”へシフトしている点が大きな特徴です。また「Y2J」「スーツ姿の傲慢ヒール」「リスト・オブ・ジェリコ」「ザ・オチャンピオン」など、時代ごとにキャラクターを大胆に刷新し、常に旬の存在として第一線に居続けていることが唯一無二の強みと言えます。

WWEからAEWまでの主なキャリア年表

年代 団体・ブランド 主なトピック
~1999年 WCWほか クルーザー級で頭角を現し、ライオンテイマーなど技巧派として評価を獲得
1999~2001年 WWE(アティテュード期) RAWでの“ミレニアム”デビュー、IC王座戴冠、ロックやトリプルHと抗争
2001~2004年 WWE 初代統一世界王者としてHHH・ロック・オースチンと激突、WM19のショーン戦など名勝負を連発
2005~2007年 WWE~一時離脱 バンド活動などで一時プロレスから距離を置くが、カムバックを準備
2007~2010年 WWE(再登場期) スーツ姿の冷酷ヒールへ転身、シナ、マイケルズらと高評価シリーズを展開
2010年代前半 WWE マネー・イン・ザ・バンク考案者としても知られ、パートタイム的に登場しつつ存在感を維持
2016~2018年 WWE オーエンズとの「ベストフレンズ」ストーリー、「リスト・オブ・ジェリコ」で再ブレイク
2018~2019年 NJPW オメガ、内藤哲也との抗争で“世界のレジェンド”として評価をさらに拡大
2019年~ AEW 初代AEW世界王者となり団体の顔に。インナーサークル結成後も、各種ギミックや試合形式で常に話題を提供

クリス・ジェリコのキャリアは、複数団体を渡り歩きながら常にメインストーリーの中心にいる期間が長いことが特徴です。各時代で役割やスタイルを変えつつも、タイトル戦線と話題性の両面でトップクラスを維持し続けてきました。この記事で扱う名試合5選は、この年表の中でも「ターニングポイント」や「代表的なピーク」に当たるタイミングから選ばれています。読者が年代ごとの位置づけを押さえておくことで、試合の意味や価値がより理解しやすくなります。

リングスタイルとキャラクター変化の特徴

クリス・ジェリコの魅力を語るうえで外せないのが、リングスタイルとキャラクターの“変身力”です。デビュー当初はジュニアヘビー級らしいスピードと空中殺法が武器で、ライオンソルトやスプリングボード系の攻撃を多用するテクニカル寄りのハイフライヤーでした。

WWE移籍後は、攻撃の比重をグラウンドと打撃にシフトし、ウォール・オブ・ジェリコを中心としたサブミッションと、ライオットキックなどのキックで試合を組み立てるスタイルに変化します。年齢とともに派手な飛び技を減らしつつ、間の取り方や受けのうまさ、表情で物語を見せる“ストーリーテラー型”のファイトへと進化しました。

キャラクター面でも、WCW時代の軽妙なクルーザー級ヒール、WWE初期の「Y2J」、スーツ姿で無表情に戦う“サディスティックなリアリスト”、ロックバンドFozzyのフロントマン要素を盛り込んだカリスマキャラ、AEWの「リ・インヴェンション」を掲げるレ・シャンピオンなど、団体や時代に合わせて大きく変化しています。変わらないのは観客を操るマイク力と、どのバージョンでもメインクラスに順応する柔軟性であり、名試合の多くはこうしたスタイルとキャラクターの変遷と密接に結び付いています。

名試合5選の選定基準と押さえたい時代区分

結論から言うと、クリス・ジェリコの名試合を語るには「時代」と「役割」の両方を見ることが重要です。本特集では、単に試合内容の評価だけでなく、ジェリコのキャリアの転換点や団体の流れも踏まえて選定しています。

まず時代区分としては、以下の4つを意識しています。

時代区分 主な所属 ポイント
2000年前後 WWE(アティテュード期) 中堅からメイン昇格期、ハードでスピーディーな攻防
2001〜2003年 WWE黄金期 テクニシャンとして頭角、IC戦線〜WMクラスのビッグマッチ
2010年代以降 ベテラン期WWE キャラクター職人としての成熟(本特集では補足扱い)
2019年以降 AEW 看板スター兼プロデューサー的立場、新しい挑戦と実験

そのうえで、「技術的な完成度」「ストーリーテリング」「歴史的・キャリア的な意味」という3軸を重視しています。名勝負度だけでなく、ジェリコを初めて観るファンが「どの時代に何を成し遂げてきたのか」を一気に掴めるラインアップになるように構成しています。

技術・ストーリー・歴史的価値で厳選

クリス・ジェリコの試合は、単に面白いだけでなく、技術・ストーリー・歴史的価値の3点で評価が高い試合が多く存在します。今回の特集では、その3軸を明確にしながら名試合を選定しています。

まず技術面では、レスリングスキル、試合運び、相手の魅力の引き出し方を重視しています。次にストーリー面では、試合に至る抗争の背景や、当日の心理描写、試合後のドラマ性を評価対象としています。そして歴史的価値として、団体の転換点になった試合か、キャリア上のターニングポイントになった試合かどうかを重視しました。

この3つを満たす試合を、WWE黄金期からAEWでの現在進行形の活躍まで、時代をまたいで比較できるようにピックアップしています。単なる好き嫌いではなく、多くのファンにとって「損しない入門用名試合」として勧められるラインナップを意識しています。

WWE黄金期とAEW以降をバランス良く紹介

クリス・ジェリコの名試合を語るうえで重要なのが、WWEアティテュード期~ルースレスアグレッション期の“黄金期”と、AEW以降のベテラン期をどちらも押さえることです。黄金期は、WWEのメインストリームに躍り出た時代であり、IC王座戦やラストマンスタンディング戦、ロックとのタッグ戦など、技術面とストーリーテリングが最も勢いを持っていたタイミングに当たります。

一方、AEWでは初代世界王者として団体を牽引しつつ、ニック・ゲージとのデスマッチのように、50代に入っても新しいスタイルに挑戦し続ける“変化し続けるレジェンド”としての姿が際立ちます。本特集で取り上げる5試合は、WWEでスターへの階段を駆け上がっていく様子と、AEWでベテランとして挑戦を続ける姿を、できるだけバランス良く追える構成としています。これにより、初見ファンでも“若手時代から現在までの進化”を一本の線として理解しやすくなります。

WrestleMania19戦 ショーン戦で魅せたドラマ

クリス・ジェリコの名試合を語るうえで、WrestleMania 19のショーン・マイケルズ戦は外せない一戦です。タイトルマッチではなく、純粋なシングル戦ながら、名勝負として語り継がれています。

舞台は年間最大の祭典レッスルマニア。対戦相手は“Mr.レッスルマニア”と呼ばれるHBKことショーン・マイケルズ。ジェリコは尊敬してきたレジェンドを越えることで、自らの価値を証明しようとしていました。若き日のショーンに憧れていた少年時代の映像がストーリーに組み込まれ、「憧れのヒーローを超える」という明快なテーマが全編を貫いています。

試合内容は、派手なスポットよりも心理戦とドラマ性重視のテクニカルバトル。試合後の抱擁からの急所攻撃まで含め、1本の映画のような構成になっており、ジェリコの表現力とストーリーテリングの高さを体感するには最適な試合です。

試合の基本情報と当時のポジション

WrestleMania19で行われたショーン・マイケルズ戦は、2003年3月30日、シアトルのセーフコ・フィールドで実施されたシングルマッチです。ブランド分割後のRAW所属カードで、PPV中盤に組まれたものの、大会全体を代表する名勝負として語り継がれています

当時のクリス・ジェリコは、すでに初代統一王者を経験し、マイクとテクニックの両面で評価された上位カード常連レスラーでしたが、トリプルHやブロック・レスナーのような“絶対的トップ”とは一段差があるポジションでした。一方のショーンは長期欠場から復帰し、レジェンドとして存在感を取り戻していた時期です。

この一戦は「次世代トップ候補のジェリコが、伝説的スターであるマイケルズを超えられるか」がテーマであり、ジェリコの“メインイベンター昇格試験”のような意味合いを持つカードとして扱われていました。

師弟関係を軸にしたストーリーの深さ

ジェリコvsショーン戦の最大の魅力は、単なる「ベテランvs若手」の構図ではなく、ジェリコが“憧れのスターを超えようとする弟子役”として描かれている点です。若い頃からショーン・マイケルズを理想像としてきたジェリコは、プロモやVTRで「ショーンの後追いではなく、自分こそが本物のショーストッパーだ」と強く主張します。

一方のショーンは、カムバック直後のベテランとして、かつての自分を重ねたようなジェリコを相手に、余裕とプライドを見せながらも、次第に本気を引き出されていきます。師を超えたいジェリコのコンプレックスと、師としての矜持を守りたいショーンの感情がぶつかることで、試合全体が非常に人間ドラマ濃度の高い内容になっています。

試合後のローブローと涙を浮かべるジェリコの表情まで含めて、尊敬と嫉妬、憧れと葛藤が交錯する「師弟物語」として完成しており、WrestleManiaの大舞台ならではのストーリーテリングが体感できます。

技術戦と感情表現が光る見どころポイント

ジェリコ対マイケルズ戦の魅力は、派手な大技よりも技術と感情の積み重ねで試合が進んでいく点にあります。序盤はテクニカルなグラウンドの攻防や、ロープワークの読み合いで両者のスキルを見せつけ、中盤以降は各自のシグネチャームーブを小出しにしながら、フィニッシュへ向けた「布石」を丁寧に配置していきます。

見どころとして注目したいのが、シャープシューターとウォール・オブ・ジェリコの極め合い、そしてスイート・チン・ミュージックを巡る攻防です。フィニッシャーが決まるたびに試合が終わりそうで終わらないカウント2.9の連続が、観客の感情を一気に引き上げます。また、試合後の“ローブローからの抱擁拒否”というラストは、師弟関係の歪んだ感情を象徴する名シーンであり、試合内容とストーリーが完璧にリンクした結末として高く評価されています。

Royal Rumble2001 ベノワとのラダーマッチ

Royal Rumble 2001で行われたクリス・ジェリコ対クリス・ベノワのラダーマッチは、IC王座戦線だけでなく、当時のWWEミッドカードのレベルを象徴する一戦として高く評価されています。PPVの序盤に組まれた試合ながら、テクニックと危険度の両方を極限まで高めた名勝負として語り継がれています。

会場はニューオーリンズのスーパードーム(ルイジアナ州ニューオーリンズ)で、時期はアティテュード期の真っただ中。両者とも既に実力者として知られていましたが、メインイベンターではなく、IC王座を巡る「中堅トップ」のポジションというのがポイントです。ラダーを使ったハードな攻防に加え、細かなレスリングテクニックも存分に盛り込まれており、ジェリコの「危険試合もこなせるオールラウンダー」としての評価を決定づけた試合と言えます。

IC王座戦と試合ルールの整理

ロイヤルランブル2001で行われたクリス・ジェリコ vs クリス・ベノワは、WWEインターコンチネンタル王座(IC王座)を懸けたラダーマッチです。IC王座は当時、中堅トップ~メイン昇格候補が争う「技術派のステータスベルト」で、ジェリコとベノワはいずれもRAWのIC戦線を牽引する存在でした。

ラダーマッチの基本ルールは、ピンフォールやギブアップは一切カウントされず、天井から吊るされた王座ベルトをラダー(はしご)を使って先に奪い取った選手が勝者となります。場外カウントアウトや反則負けもなく、ラダーを使った攻撃が認められるため、身体を張った危険なスポットが多発しやすい形式です。

このIC王座ラダーマッチは、技術派同士が王座の価値と意地を懸けて真っ向勝負した一戦であり、のちのラダーマッチ名勝負の基準にもなったと評価されています。

ラダーを活かした攻防と危険技の数々

ジェリコvsベノワのラダーマッチは、単なる「梯子を使った大技の応酬」ではなく、ラダーを徹底的に“武器”かつ“リングの一部”として使い切った試合です。序盤からラダーを使ったボディへの一点集中攻撃が続き、中盤以降はラダー上でのサブミッションや、頂上からの飛び技など、通常のIC戦とは一線を画す危険な攻防が連発されます。

特に印象的なのが、ロープに立てかけたラダーへのパワーボムや、ラダーごとリング外へ転落する場面など、現在の感覚で見てもかなりリスキーなスポットです。高所からの飛び技だけでなく、細かい一撃ごとに「一歩間違えば大怪我」という緊張感があり、ラダーマッチの持つ“痛み”と“恐怖”を体感できる内容になっています。技の派手さと同時に、二人の受け身の巧さや間の取り方も際立つ、完成度の高いラダー戦です。

当時のIC戦線における位置づけ

2001年前後のIC王座戦線は、アティテュード期の中堅〜上位陣がひしめく激戦区でした。その中でジェリコvsベノワのラダーマッチは、IC王座戦線の“頂上決戦”として位置づけられる一戦です。

当時のロースターでは、IC王座は若手や移籍組がメイン戦線へ上がるための登竜門という意味合いが強く、クリス・ジェリコとクリス・ベノワはまさにその最前列にいた存在でした。二人はPPVやTVショーで王座を奪い合い、ラダーマッチはその抗争のクライマックスの一つといえます。

また、ストーン・コールド、ロック、トリプルHらヘビー級主力がメインイベントを独占するなか、IC王座戦がカード全体の“試合クオリティ担当”として求められていた側面も重要です。ジェリコとベノワは、技術と危険度の高い攻防でその期待に応え、IC王座の価値をヘビー級王座に迫るレベルまで引き上げた試合として、今でも語り継がれています。

RAWタッグ戦 ロックとの豪華共演タッグ

WWE・RAWでのロックとのタッグは、クリス・ジェリコのキャリアの中でもスター性と実力を同時に証明した重要な一戦として語られます。相方はザ・ロック、対戦相手はダッドリーボーイズという、アティテュード期を象徴する豪華カードで、放送の目玉となるメイン級の扱いでした。

このタッグ戦では、ジェリコはロックに負けないマイクアピールと存在感を発揮しつつ、試合ではテンポの速いテクニカルな攻防と、ベビーフェイスとしてのわかりやすい立ち回りを見せています。シングル戦線でIC王座を争う合間に、トップスターとの共闘を通じてメインイベント常連への階段を上っていく過程が分かる試合であり、アティテュード期の雰囲気をまとめて味わいたいファンにも適した1本です。

ロック&ジェリコvsダッドリーズの背景

2001年のRAWで行われたロック&クリス・ジェリコvsダッドリー・ボーイズは、アティテュード期後半のWWEを象徴する“豪華タッグ戦”として知られています。時期としてはインベージョン前後で、ロックは完全なトップベビーフェイス、ジェリコはシングル戦線で頭角を現しつつある人気者というポジションでした。

対戦相手のダッドリー・ボーイズは、タッグ戦線の絶対的ヒールとしてRAWの番組を支える存在で、テーブル攻撃を武器に常に観客のブーイングを集めていました。人気者同士のドリームタッグに、悪名高いタッグスペシャリストをぶつけることで、番組のメイン級カードとして視聴率と会場の熱を狙ったマッチメイクだったと言えます。

また、ロックとジェリコのチームアップは、将来的なシングルでの対立や、メインイベント戦線での扱いを占う意味でも注目され、当時のファンにとって「RAWを見逃せない理由」のひとつになっていました。

タッグワークと観客の盛り上がりを解説

ロックとジェリコは、序盤からタッチを細かく繰り返しながら、それぞれの得意ムーブで観客の反応を引き上げていきます。ロックがボディスラムからピープルズ・エルボーを狙い、ジェリコがライオンサルトやスプリングボードドロップキックで畳みかける流れは、完全に“ベビーフェイス側の理想形”と言える展開です。

一方でダッドリーボーイズは、レフェリーの死角を突いたダブル攻撃や、ジェリコをロングアイソレーションするヒールワークでペースを掌握します。ジェリコが延々と捕まり、観客の「ロッキー」チャントがどんどん大きくなっていく時間帯が、この試合の最大の見どころのひとつです。

終盤はホットタグからロックが一気に流れを変え、ロックボトムやスパインバスターからの怒涛のラッシュに会場が完全にヒートアップします。各チームのフィニッシュムーブ未遂が連続し、「いつ終わってもおかしくない」空気の中でカウント2が続く構成が、当時のRAWらしいテレビマッチのテンポと盛り上がりを象徴しています。

アティテュード期を象徴する要素

アティテュード期ど真ん中のRAWタッグ戦は、当時のWWEを象徴する「豪華カード」「ノリの良い観客」「スピード感ある展開」が凝縮された一戦です。トップスター同士の共演、激しいマイク合戦、ヒールとベビーフェイスが入り乱れるカオスな空気など、長期ストーリーを追っていなくても一気に世界観をつかめる要素が詰まっています。

特にロックとジェリコの丁々発止のやり取りは、アティテュード期特有の毒舌とユーモアを兼ね備えたプロモの魅力を体現しています。さらに、会場全体を巻き込むコール&レスポンス、ヒールのダッドリーズに向けられる大ブーイングなど、観客のリアクションが試合の一部として機能している点も重要です。派手なスポットだけでなく、CM前後の引きやレフェリーの混乱演出まで、TVショーとして完成度が高く、WWE黄金期の雰囲気を短時間で味わう“教科書的”なタッグマッチと言えます。

Fully Loaded2000 トリプルHとの死闘

2000年のPPV「Fully Loaded 2000」で行われたトリプルH戦は、メインイベンター昇格前のクリス・ジェリコが“格”を証明した代表的シングルマッチです。ラストマンスタンディング形式で行われ、アティテュード期らしい激しい場外戦と流血を前面に押し出したハードな一戦となりました。

対戦相手のトリプルHは当時WWEトップヒールとして完全にメインに定着しており、ジェリコはIC級の人気者から一段階上を狙うポジション。結果は紙一重で敗北しながらも、限界ギリギリまで粘るファイトと、観客を一気にジェリコ応援ムードに変える試合運びによって、「負けて価値を上げた」クラシックマッチと評価されます。のちの世界王座戴冠へとつながる重要なターニングポイントとして押さえておきたい一戦です。

ラストマンスタンディング戦とは何か

ラストマンスタンディング戦は、相手を10カウント以内に立ち上がれなくするまで攻撃し続ける“ノックアウト制”のルールです。ピンフォールもギブアップもなく、レフェリーの10カウントで勝敗が決まります。場外カウントも反則負けも基本的に存在せず、リング内外を問わず戦えるため、ハードコア色の強い試合形式として知られています。

Fully Loaded 2000のトリプルH戦では、このルールがジェリコの「決して諦めないベビーフェイス像」と、トリプルHの「冷酷なトップヒール像」を際立たせました。どれだけ攻撃を受けても立ち上がるか、それとも完全に沈められるかというドラマが前面に出るため、肉体的な消耗戦とストーリーテリングの両方を楽しめる形式と言えます。

流血と場外戦が続くハードバンプの数々

ラストマンスタンディング戦の魅力は、10カウントKOを奪うためにどこまで自分の身体を犠牲にできるかという極限の攻防にあります。Fully Loaded 2000のジェリコvsトリプルHは、その象徴的な一戦です。

試合序盤からバリケードへの叩きつけや場外での乱闘が多く、場内の通路やステージ付近まで戦場が広がります。鉄階段へのDDT、テーブルを使ったハイリスクなスポット、スチールチェアでの一撃など、通常のシングルマッチではまず見られないレベルのハードバンプが連発されました。

中盤以降は流血による視覚的インパクトが加わり、ジェリコのダメージ表現とトリプルHの執拗な攻めが重なって、消耗戦の緊張感が一気に高まります。観客のカウントに合わせた歓声とブーイングも相まって、単なる流血試合ではなく、「立ち上がること」そのものがドラマとして成立している点が大きな見どころです。

メインイベンター格へのステップアップ

Fully Loaded 2000のラストマンスタンディング戦は、単なるPPV中盤の好勝負ではなく、クリス・ジェリコがWWEのメインイベンター枠に食い込む“試験”のような一戦でした。対戦相手は当時WWFのトップヒールだったトリプルH。メイン級の抗争線にジェリコが本格的に組み込まれたことで、「中堅の技巧派」から「トップ戦線を任せられるスター」への評価が一気に高まります。

試合内容は流血と場外戦を交えた超肉体派スタイルで、ジェリコは得意のスピードやテクニックだけでなく、タフネスと根性を証明しました。結果はトリプルHの勝利ながら、敗北しても格が落ちず、むしろ株を上げた代表的な試合とされます。この激闘を経て、ジェリコは世界王座戦線への起用が増え、のちの初代無差別級統一王者戴冠へとつながる重要なターニングポイントになりました。

AEW編 ニック・ゲージ戦で見せた狂気

AEWでのニック・ゲージ戦は、クリス・ジェリコの長いキャリアでも特に異質な一戦です。番組内企画「ラボラトリーマッチ」の一環として行われたデスマッチ形式で、デスマッチ専門家であるニック・ゲージを相手に、ジェリコがどこまで“狂気”に踏み込めるかが問われました。

ベテランでありながら、有刺鉄線やガラスボードを用いる過激なデスマッチに挑戦した点が最大の見どころです。AEWではすでに大物ヒールとしての地位を確立していましたが、単なる話題作りではなく、流血と危険技を受け切ることで「まだ限界を決めていないレスラー」であることを証明しました。

WWE時代のテクニカルなイメージしかないファンにとって、AEW版ジェリコが持つ表現の幅や覚悟を理解するうえで、外せない一戦と言えます。

ラボラトリーマッチ企画とデスマッチ導入

ニック・ゲージ戦は、MJFが課した“ラボラトリーマッチ”シリーズの一環として行われました。MJFはクリス・ジェリコに対し、毎週ルールの異なる試練を課し、連勝すればようやくMJF本人と対戦できるという企画を提示します。その中でも第2の試練として組まれたのが、GCWきってのデスマッチアイコン、ニック・ゲージとのデスマッチでした。

AEWとしては地上波放送での本格的なデスマッチ導入はチャレンジであり、番組全体の話題作りと視聴率アップを狙ったカードでもありました。一方でジェリコ側から見ると、WWEではほぼ実現しなかった“本格流血戦”への挑戦であり、過去の実績ではなく、今もリスクを取るトップスターであることを証明する場という意味合いが強い試合でした。

ガラスや有刺鉄線を使った危険シーン解説

ジェリコvsニック・ゲージ戦は、ガラスや有刺鉄線など通常のテレビマッチではまず見られない凶器が大量投入されたデスマッチです。代表的な危険シーンを整理すると、次のようになります。

シーン 使用された凶器・ギミック ポイント
蛍光灯&ガラスボード攻撃 蛍光灯束、ガラスボード ガラス片がリング一面に飛び散り、カットも多数。流血表現が極めて激しい場面です。
有刺鉄線ボードへの投げ捨て 有刺鉄線ボード 有刺鉄線が衣服と肌に食い込み、抜け出す動きも含めて痛みが伝わるスポットです。
ピザカッター攻撃 ピザカッター 額を削るように使用され、流血量と視覚的インパクトが非常に大きいシーンです。

特に、蛍光灯やガラスボード、有刺鉄線ボードが割れる瞬間はリプレイでも何度も映されるため、流血や残虐表現が苦手なファンは視聴を強く控えた方が良いレベルの試合だと理解しておく必要があります。

ベテランが挑んだ新たな挑戦の意義

年齢的にもレジェンド枠に入るクリス・ジェリコが、GCWのデスマッチ番長ニック・ゲージとの試合に踏み切った背景には、「トップスターのまま老いていくためのチャレンジ」という意味合いがあります。安全圏にとどまらず、敢えて未知のスタイルに飛び込むことで、ベテランでありながら話題の中心に立ち続ける狙いがありました。

また、AEWとしては「WWEでは絶対に見られないジェリコ像」を提示することで、番組全体のカラーを明確にする意図もありました。ジェリコ自身も長年、技術派・エンタメ型として評価されてきましたが、デスマッチに挑戦することで「痛みをいとわない狂気性」まで表現の幅を広げています。

結果として、ニック・ゲージ戦はベテランがキャリア晩年で評価を上げ直す成功例となり、AEWの多様性とジェリコの“まだ終わらない”スター性を強く印象づけるターニングポイントになりました。

日本からの視聴方法とおすすめ視聴順

クリス・ジェリコの名試合は、WWE系サービスとAEW配信の両方を押さえると、ほぼ網羅的に視聴できます。 まずは各試合が収録されているサービスの全体像を把握するとスムーズです。

区分 試合タイトル 団体 収録されている主な配信サービスの例
1 WrestleMania 19 ジェリコ vs ショーン・マイケルズ WWE WWEネットワーク系サービス、WWE PPVアーカイブ配信など
2 Royal Rumble 2001 IC王座ラダーマッチ(ジェリコ vs ベノワ) WWE WWEネットワーク系サービス
3 RAW 2001 ジェリコ&ロック vs ダッドリーボーイズ WWE RAWアーカイブ配信(WWEネットワーク系)
4 Fully Loaded 2000 ラストマン・スタンディング(ジェリコ vs トリプルH) WWE PPVアーカイブ配信(WWEネットワーク系)
5 AEW ニック・ゲージ戦 AEW AEWを扱う国内配信サービス(週刊番組・PPVアーカイブ)

WWE時代の4試合は、WWEネットワーク系のアーカイブを契約すれば一気に視聴可能なパターンが多く、AEWのニック・ゲージ戦のみ、AEWを取り扱う日本向け配信サービス(週刊TVショーやPPVを配信しているサービス)での視聴が基本になります。

続く見出しで、WWEネットワーク系サービスとAEWの国内配信について、それぞれ具体的な視聴方法を解説していきます。

WWEネットワーク系サービスでの視聴手段

クリス・ジェリコのWWE時代の名試合は、基本的に「WWEネットワーク系サービス」で網羅的に視聴できます。現在、日本からジェリコ関連のWWE戦を観る主な手段は以下のとおりです。

サービス名 主な内容 備考
WWE Network(グローバル版) PPVアーカイブ、RAW・SmackDownの過去回、ドキュメンタリーなど 日本からはVPNが必要な場合あり
ABEMA・U-NEXTなどのWWE関連配信 最新PPV、直近のTVショー中心 過去アーカイブは限定的

ジェリコのWrestleMania19ショーン戦、Royal Rumble 2001ラダーマッチ、Fully Loaded 2000など、今回の特集で扱うWWE時代の名試合はWWE Networkのアーカイブで確認できることが多いため、WWE Network系への加入が最も確実です。登録前に、各サービスの最新の配信ラインナップと日本からの視聴可否を公式サイトで確認すると安心です。

AEW関連試合をチェックできる配信情報

AEWの試合(ニック・ゲージ戦を含む)は、日本では主にサブスク型の配信サービスとPPV配信で視聴できます。最新情報は必ず公式サイトや配信元の番組表で確認してください。

サービス 主な内容 備考
AEW公式YouTube 無料ハイライト、Road to、Being The Eliteなど 試合フルではなく、ダイジェストやストーリー補完向け
AEW Plus(FITE) 『Dynamite』『Rampage』など週刊TVショーのライブ&見逃し 日本からも契約可能なことが多い海外配信サービス
PPV配信(FITE、他) 『Double or Nothing』『All Out』などPPV大会 大会ごとに都度課金。過去大会の見逃し配信も対象になる場合あり

ニック・ゲージ戦は、AEW『Dynamite』内の“ラボラトリーマッチ”企画の一環として放送されたため、AEW Plusなどの過去エピソード配信で探す形になります。あわせてAEW公式YouTubeのハイライト動画を視聴すると、流れをつかみやすくなります。

初見ファン向けおすすめ視聴順ガイド

クリス・ジェリコの試合を初めて追う場合は、WWE期→AEW期の順で、時系列をおおまかに追う視聴が最も分かりやすい流れになります。迷った場合は、次の順番がおすすめです。

順番 大会・番組 / 対戦カード 視聴のポイント
1 Fully Loaded 2000 ジェリコ vs トリプルH ブレイク前夜の勢いとタフさを把握する入門編
2 Royal Rumble 2001 ジェリコ vs クリス・ベノワ(ICラダーマッチ) ラダーマッチ巧者としての技術と受けの強さを確認
3 RAW 2001 ジェリコ&ロック vs ダッドリーボーイズ アティテュード期の空気感とマイク&タッグワークを理解
4 WrestleMania 19 ジェリコ vs ショーン・マイケルズ 技術とドラマが最高潮に達した“完成形”を堪能
5 AEW Dynamite ジェリコ vs ニック・ゲージ ベテラン期の挑戦精神とキャラクターの振れ幅を体感

前半4試合でWWE黄金期の成長と完成形を押さえ、最後にAEWでの新境地を見る構成にすることで、ジェリコの20年以上にわたる変化と一貫した魅力が自然に理解しやすくなります。時間がない場合は、①→④→⑤の3試合でも全体像をつかめます。

ほかに押さえたい代表的試合と今後の注目

クリス・ジェリコの魅力をより深く理解するためには、特集で紹介した5試合以外にもキャリアの節目となった代表的試合を押さえておくことが重要です。特に、WWE世界初統一王者決定戦、初のWWE世界王座戴冠戦、NJPWへの参戦試合、AEW世界王座戦線の大一番などは、ジェリコ像を立体的にしてくれます。

時代ごとに「若手からメインイベンターへ」「WWEの顔から世界を渡り歩くスターへ」「AEWでのベテラン/ユニットリーダーへ」と役割が変化している点も見どころです。今後もAEWで若手育成役やストーリーの中核として重要ポジションを担い続ける可能性が高く、ビッグマッチでのサプライズや引退ロードの描かれ方にも注目しておくと、日々のニュースがより楽しめます。

世界初統一王者戦など外せない名場面

クリス・ジェリコを語るうえで、世界初の統一王者戴冠と、その前後の名場面は外せません。とくに2001年12月のVengeanceでの「世界初統一王者」達成はキャリア最大級のハイライトです。1夜でザ・ロックからWCW王座、スティーブ・オースチンからWWE王座を奪取し、両団体の世界王座を統一した実績は、アティテュード期終盤を象徴する歴史的瞬間といえます。

そのほか、2008年ごろのショーン・マイケルズとの長期抗争(アンフォーギブンのラダー戦など)、2010年台前半のマネー・イン・ザ・バンク戦線への関与、2018年新日本プロレスでのケニー・オメガ戦、2019年AEW初代世界王座決定戦なども、ジェリコ像を理解するうえで重要な試合群です。WWE・新日本・AEWと舞台を移しながら常に「時代の顔」と交わってきたキャリアこそが、ジェリコの特異性を際立たせています。

現在のAEWでの役割とストーリー動向

クリス・ジェリコはAEWでは、インナー・サークルやジャスティス・ソサエティ(JAS)を率いたカリスマヒールから、若手を引き上げる“看板ベテラン”へと役割をシフトさせています。現在のジェリコは「トップを争う中心選手」でありつつ、「次世代スター育成の軸」になっている点が最大の特徴です。

デビュー当初は団体の顔としてAEW世界王座を戴冠し、モクスリーやオメガ、MJFらとの抗争で団体のブランドを確立しました。その後はダニエル・ガルシア、サミー・ゲバラ、パワーハウス・ホブスなど、若手・中堅との長期ストーリーを展開し、彼らにメインイベント級の経験値を与えています。

ストーリー面では、ヒールとベビーフェイスを柔軟に行き来しながら、観客の反応を最大化する役回りを担っています。レジェンド枠に収まりきらず、常に新しいユニット結成やギミック刷新を仕掛けていく可能性が高い選手なので、今後も「誰と組み」「誰と決別するか」がAEWの全体図を左右すると言えます。

本特集では、クリス・ジェリコのキャリアをWWE黄金期からAEWの現在まで俯瞰しつつ、技術・ストーリー・歴史的価値から損しない名試合5選を整理しました。どの試合も、ジェリコの変幻自在なキャラクターとリングワークが凝縮されており、日本からの視聴方法やおすすめ視聴順も押さえれば、過去作の復習にもAEW最新ストーリーの理解にも役立つ内容となっています。